ソロモン諸島政府観光局ブログ

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インタビュー企画(1)前編【JICAコミュニティ主体の沿岸資源管理】

こんにちは!

 

今回はソロモン諸島で活躍されている日本人にインタビューをさせていただきました!ソロモン諸島でのご活躍はもちろんのこと、現地の最新情報についてもお伝えしていきます。

 

記念すべき第一回はJICAコミュニティ主体の沿岸資源管理(CBRM:Community-based Resource Management)・利用による生活向上のプログラムのアドバイザーを担当されている、アイ・シー・ネット株式会社シニアコンサルタント飯沼光生さんに、元在住の早水綾野よりインタビューさせていただきました。前編ではプロジェクトの内容、後編ではソロモン諸島の魅力や観光についてお伝えしていきます。

 

※なお、インタビューはオンラインにて行われました。また、敬称は省略させていただいています。

 

目次

1. プロジェクトの概要
2. 沿岸資源について
3. 生活向上について
 

1. プロジェクトの概要

早水:プロジェクトの概要をご説明いただけますか?

飯沼大洋州は食料を水産物に依存していますので、やはり海で採ってきたものをいかに有効に活用して、自分たちの生計やまたは何かの所得に繋げていっていただき、ひいては持続的に海を守り今後のコミュニティの資源として有効に使っていただくことが非常に重要になっています。

ただ大洋州、特にソロモン諸島は離島なので、政府の監視や指導が行き届かない場合が多いのですね。やはり海の資源はコミュニティのものなのでコミュニティの人たちが自分たちで海の資源を守っていくという指導を私たちがしていかないといけないのです。

具体的には、コミュニティ型沿岸資源管理というのを今JICAや他のNGOさんが推奨しています。NGOや政府がアドバイスはするけれども基本的にコミュニティの方々が自ら海を守り、自分たちの生活や生計に活用していただくということですね。

要するに、採っても良いけれども、一気に採ってしまうと回復するのに時間がかかってしまうので、資源を将来に残すために採りすぎないようにするにはどの方法が効果的なのかをコミュニティの方々と共に考え、そのルールをコミュニティの方々に実行していただくことを実施しております。

 

2. 沿岸資源について

早水:ありがとうございます。資源と言いますとたくさんあるとは思うのですが、私たち日本人にとって身近な資源はございますか。

飯沼:今私たちが指導している資源は主に「ナマコ」ですね。やはり近年中国にとって輸入品として重要になってきています。他には、「タカセガイ」ですね。貝ボタンや貝細工の材料として国際的にも流通しているものです。それから「シャコガイ」や「ヤコウガイ」も保護する対象にしています。「ヤコウガイ」は沖縄でも採れるのですが、磨くと綺麗になるので螺鈿(らでん)細工(※)という装飾品の材料として活用されています。あとはリーフ(サンゴ礁)にいる色とりどりな魚も含めています。要するに基本的に海に入って採れるもの全般ですね。全て記録をとり適切な量をとる管理をできるように指導しています。

 

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少年と「タカセガイ」

早水:貝細工製作ワークショップも開かれたそうですね。お写真を拝見いたしました。ホニアラ中央市場にも貝を使った民芸品が売っていて貝を使った商品も売っていたと思います。これらの民芸品の社会的インパクト(良い、悪い両局面)について教えてください。

飯沼:黄蝶貝などのことだと思いますが、貝細工はたくさん作れるわけではないので、これらの貝をたくさんとりすぎるということはないだろうと思います。ただホニアラの貝細工の貝は、中には女性たちが作っているのもあるのですが、ホニアラではもう足りないのですよね。ウェスタンやマライタなど地方から貝を集めてホニアラに売りに来る業者がいて、女性たちは業者から買って自分たちで細工とかしています。貝は資源としては産業向け、例えば貝ボタンとして使われるタカセガイのような貝は本当に採りすぎちゃうこともあるんですけど、民芸品を作る分には問題ないと思います。

 

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ティアロ湾のリーフ



早水:なるほど。先ほどリーフにいる魚も海の資源だとおっしゃられたと思うのですが、リーフにいる魚も輸出用になっているんですか?

飯沼:いえ、リーフにいる魚は地元の方々が自分たちで食べたり、ホニアラなどの都市に送ってるんですよね。

早水:確かにホニアラ中央市場でカラフルなお魚が売られているの見たことあります(笑)。

飯沼:そうですね。あれは全部マライタとかガダルカナルとか場合によってはウェスタンの方からみんな持ってきてるんですよね(笑)。

 


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ティアロ湾での魚釣り



3. 生活向上について

早水:なるほど。ありがとうございます。またプロジェクトのお話に戻ってしまうのですが、JICAの記事を読ませていただいた際に、プロジェクトは資源管理と生活向上の二本柱だと理解しました。資源管理の方は採っても良いけど取りすぎてはいけませんよということで、ただ現地の方々の収入が資源に依存しているので生活向上もされているという解釈でよろしかったでしょうか。生活向上とは具体的にどう言ったご活動なのでしょうか。

飯沼:そうですね、そういったことであっていると思います。よくある方法だと、ある一定のゾーンを定めて、その中の魚も貝もナマコも採ってはいけないというのがあると思うのです。禁漁区みたいな考え方で一番手っ取り早いんですよ。何も手をつけないから資源はどんどん回復していくんです。ヨーロッパ諸国のNGOがやるのがこの方法ですね。ソロモン諸島でこれをやっているのはアナボンですよね。ただそれをやるとコミュニティの方々はそこの資源をとることができなくなるので、食料や生計の面でも困っちゃいますよね。そういうことではなくて、採っても良いがみんなでルールを作って守っていきましょうという考え方。海の資源も自分たちの生活も一緒に守っていきましょうっていう考え方ですね。

日本の水産業はそういった持続的な考えがあるので、こういった考え方を太洋州でも応用して制度化できるようにしようというのが目的です。ソロモン諸島は割と政府が考案した政策をやってしまうケースが多いとは思うのですが、私たちはそうではなくてコミュニティの方々の意見を尊重して政府が政策に反映していくボトムアップ型の方が効果的ではないかと考えています。

 


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ティアロ湾の夕焼け
 

 
持続的な資源の使い方を指導するという、近年SDGsなどでまさに重要になっている考え方を広めていらっしゃり感銘を受けました。


みなさま、ご覧いただきありがとうございました。後編では秘境であふれているソロモン諸島の観光についてのお話を紹介いたします。


螺鈿(らでん)細工
日本では奈良時代から楽器などの装飾にも使われていました。有名どころでは奈良県正倉院の「螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)」があります。螺鈿はのちに蒔絵(まきえ)と合流して日本独特の工芸となりました。例えば、平安時代には東京国立博物館に所蔵されている国宝、「片輪車螺鈿蒔絵手箱(かたわぐるまらでんまきえてばこ)」があります。

(インタビュー/早水綾野、馬場千智)