ソロモン諸島政府観光局ブログ

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ソロモン諸島の絶滅危惧種のハト

こんにちは。今回はソロモン諸島サンタクルーズ島に生息し、絶滅危惧種である「サンタクルーズバト(Santa Cruz Ground Dove)」についてお伝えしようと思います。

※こちらのブログの記事はオーストラリアのメディアであるABC(オーストラリア放送協会)の ”Conservationists work to save Solomon Islands' Santa Cruz Ground Dove from extinction”の記事をもとに作成しました。
www.abc.net.au



サンタクルーズバトは希少で、ソロモン諸島の活火山のみでしか生息しておらず、野生の個体種は300羽しかいません。もともとはソロモン諸島の東部やバヌアツにも生息していたのですが、ネズミ、猫、野生の豚などの天敵、そして森林破壊によりほぼ絶滅してしまったそうです。その結果、今ではソロモン諸島サンタクルーズ島近くの小さなティナクラ島でしか見かけられない「絶滅危惧種」となっています。

ティナクラ島は無人島で天敵であるネズミもおらず、活火山島であるのでサンタクルーズバトにとっては住みやすい環境なのですが、それと同時に密猟者の格好のターゲットにもなっています。

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ティナクラ島と周辺の地図

(こちらの地図は、File:Map of the Santa Cruz Islands (Solomon Islands).png
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Map_of_the_Santa_Cruz_Islands_(Solomon_Islands).png を引用、一部改変しています。)


実はサンタクルーズバトの保護活動も行われています。

2017年にティナクラ島から中東への、サンタクルーズバト110羽の密売が阻止されたことがあったのですが、その後イギリス人のジョー・ウッド氏がサンタクルーズバトの再繁殖が行われています。ウッド氏は首都ホニアラにてサンタクルーズバトのリハビリに尽力し、60羽をシンガポールの繁殖用施設に送り、残りをホニアラ郊外にて保護していました。

3年たった今、ホニアラサンタクルーズバトの数は100羽以上に上り、アメリカ合衆国のトレド動物園の資金援助をうけたウッド氏とそのチームはサンタクルーズバトをホニアラから40㎞離れた、新しい保護区域へ移動させる準備をしています。

というのも、もともとサンタクルーズバトが生息していたティナクラ島の森が2017年の噴火によりずいぶんと破壊されてしまったのです。その後なんとか野生のサンタクルーズバトの個体数も戻ったのですが、彼らにとっての天敵である豚が島に生息し始めました。ウッド氏によると、豚は島で大繁殖し、サンタクルーズバトにとって好ましい生息場所である森林の低木層を破壊してしまったのです。さらに豚たちがサンタクルーズバトを見つければ食べて殺してしまうのは明らかです。そのようなことを背景に、新しい保護区域が設置されることになりました。

つまり、密漁から救われたサンタクルーズバトがこの種全体を絶滅の危機から救う可能性があるそうです。
ちなみに新しい保護区域では絶滅危惧種であるGuadalcanal monkey-faced bat(ガダルカナル島のサルのような顔をしたオオコウモリ)や巨大なネズミも保護されるそうです。

↓Guadalcanal monkey-faced batはこんな姿だそうです。確かにお猿さんのような顔ですね。フィジーソロモン諸島でしか見られない種のようです。
australian.museum

ウッド氏によると、サンタクルーズバトの長期的な目標はハトを自然界に返すことだそうです。それには島々に生息している天敵のネズミを排除するという大きな課題がありますが、引き続き取り組んでいくそうです。




密漁されかけたおかげで種が救われる…というのは少し複雑な気持ちにはなりますが、この新しい保護区域でサンタクルーズバト含めた絶滅の危機にある動物たちが繁栄し、新たな観光スポットとなることを祈ります。


(訳・文/馬場千智)