ソロモン諸島政府観光局ブログ

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ソロモン諸島の食文化3 おにく編

こんにちは!元ソロモン在住の早水です。

前回ソロモン人が大好きなメインディッシュの魚についてお話しましたが、今回はソロモン人にとってご馳走のブタさんについて書きたいと思います。

さてソロモン人が食べる主なお肉は鶏とブタです。他にも現地で食べられているお肉はいくつかありますがそれはゆくゆく紹介させていただくとして、本日は現地語でなんとピグピグと呼ばれるブタ(よって以下ピグピグ)を村で振る舞っていただいたときのお話をしたいと思います。


ーーーー以下屠殺などの記述を含みます。苦手な方はご遠慮くださいーーーー


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石焼きの準備の様子。子どもの手にあるのは...?


当時、保健のプロジェクトでガダルカナル島の裏側(首都の反対側)の村へ出張で訪れていたときのことです。2週間に及ぶ滞在期間で、チームはすべてのタスクを終え、明日いよいよ首都に帰るぞという日、村長が「今日はピグピグだ。」と発言しました。

少し経った後、ピグピグが逆さまの状態でくくりつけられた長い棒を、4人の男が肩にかついで現れました。

お伝えすることができず残念なのですが、衝撃的過ぎたのか、この後の屠殺の瞬間の記憶がすっぽり抜けてしまっています。ちなみにソロモンでは、屠殺方法は地方によってやり方が違い、首からとか、額からとか、いくつかあります。ここの民族がどうだったのかは、上述の通り覚えていません...。

ともかくも、記憶があるのはいくつかに切り分けられた状態に立ち会ったところから。

慣れてきたのでしょうか。私はピグピグの足一本洗うのを手伝いました。海で洗うとのこと、村の女の子と2人で、大きな血だらけの足一本を持ち、海に向かいました。他の部位を持っている子たちも一緒です。足一本の重いこと重いこと。とにかく必死で運び、洗いました。

よく覚えているのは、

「ピグピグの足を洗うのは初めてだよ」と言うと、

「そっか、日本はピグピグ食べないんだね」と返されたことです。

日本のスーパーでは薄切りになった豚肉がトレーにパックされて売っていることなど、彼女の想像の範囲ではなかったようです。私はそれを説明すべきがどうかわからず、「食べたことはあるんだけどね」とだけ言い、それ以上話すのをやめてしまいました。

本来生き物をいただくということは、これ程の大仕事なのだと、思い知らされた瞬間です。


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子どもの手にあるのはピグピグの胃袋でした。水風船にして遊んでいます。


さて、海で血を洗い流した後は、小さく切り分けて、石焼きにします。ソロモンの伝統的な調理方法「モツ」です。

ふと、お母さんたちがタライの中に臓物を入れ、何か白いモノをパラパラと入れているのに気がつきました。ココナッツファイバーです。日本ではドーナツの上などによくかかっているお馴染みのあれです。「ココナッツ入れるの?」と言うと、「臭みをとるんだよ」と言っていました。

明るいうちにこれらの作業を終え、数時間後、ブタの丸焼きならぬブタの石焼きが出来上がりました。

すると、まだ宴の準備をしている最中に、キッチンに集まる女の子たちに「おいで!」と言われました。

なんと先ほどのタライをみんなで囲み、その中身をほおばっていました。

「ピグピグのオナカだよ!」

全部の部位がごちゃ混ぜになっているので、どこの部位かさっぱりわかりませんが、手で掴み、口に入れてみました。

....美味しい!とっても美味しいのです。

海の塩水で洗うのが良いのか?
ココナッツファイバーの臭みとりが良いのか?
はたまたものすごく新鮮だからか?

今まで食べた内臓系の中で、それどころか今まで食べた豚肉の中で、いちばん美味しい!と思いました。

お行儀悪くも女の子たちでタライを囲み、モリモリいただいたのを覚えています(笑)。宴が始まる頃、既にお腹いっぱいだったのは言うまでもありません。 


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石焼きからお芋やタライを取り出す女性だち


思えば、ソロモンで忘れられない味はよくキッチンで女の子たちに分けてもらったものでした。

他に覚えているのはカニの蟹味噌です。

美味しい部分は女性がキッチンで食べてしまうので、ピグピグの内臓の美味しさや、蟹味噌の美味しさを、ひょっとするとソロモンの男性は、知らないかもしれません。

(文/早水綾野)